| JOURNAL | 2017.01.20

おみくじ四兄弟|第二話|南南東の待ちびと Ⅱ

小説和場明子
キャラクターデザインpako
イラスト今井ゆうみ



南南東の待ちびと


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 それから間もない日曜日の午後。柊は青葉を誘って、商店街の人気ケーキバイキング店を訪れていた。
 その店はケーキの美味しさは勿論、お伽話から飛び出してきたような可愛い内装が女子に人気の店だった。甘いもの好きの青葉もお気に入りの店だ。
 柊の作戦は何てことない、胃袋陥落作戦だった。相談されてもいないのに、悩みを聞こうとすれば青葉のスイッチを押してしまうのは必須。そこで、大好きな甘いもので上機嫌にしておいて、少しでもスイッチの押し込み具合を軽減しようと考えたのだ。
 しかし、作戦は難航していた。
「はぁ、悩み? そんなもんねぇーし……」
「でも、おみくじ引いたんだろ?」
「だから、それは……! ……どっちにしろ、柊にぃには言いたくねぇ」
「えー、そんな寂しいこというなよ」
「ぜってぇヤダ! 分かってもらえるとも思えねぇし……」
 青葉が口を尖らせて、ショートケーキの苺をフォークで突く。
 目の前の光景に柊は既視感を覚えていた。つい最近これと同じ仕草をどこかで見たことがある……。
「そんなの、話してみないと分かんないだろう」
「わかるっつーの!」
 口を尖らせた青葉が、ぷいっと顔を背ける。
 あー……これは、と柊が気づく。恋バナを話す女子と同じだと。ケーキバイキングの残り時間はあと30分。厄介な匂いを青葉から嗅ぎ取った柊は、気合を入れ直す。
「んー……じゃあ、ここの無料チケットやるから」
「な! 俺を甘いもんで釣る気か?」
「よし、それじゃ青葉が行きたいって言ってた、隣町のスイパラにも連れてってやる!」
「……うぅ、汚ねぇぞ」
 誘惑に耐えるように、青葉がフォークを強く握りしめている。
 柊は知る限りの甘い誘惑を青葉の前に並べた。その度に、青葉の握るフォークがプルプルと揺れた。跳ね上がっていく相談料(実際は相談を聞くほうなのだが……)に柊は思っていた。もしかしたら青葉くん、今まで出会ったどの女の子よりも面倒くさいかもしれない。
「……じゃあ、ホテル最上階のケーキ食い放題でどうだ?」
 ちなみにホテル最上階のケーキ食い放題は予約も難しく、値段も張る。
 そんな柊の最終兵器に、青葉は唸るような声を出して耐えていたが、最後にはフォークを手放し了承した。
「……分かったよ。言えば良いんだろ、言えば。その代わり忘れんなよ! 無料チケットに、スイパラに食い放題! あと、志季の手作りおやつ毎日な!」
「おう、分かってるって」
 悪い、志季……尊い犠牲に心の中で一応謝っておく。
 柊はティーカップにあったかい紅茶を入れ直して、青葉に差し出した。
「それで、なんでおみくじ引いたんだ?」


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