| PICK UP | 2022.10.06

〝江口拓也ワールド〟に酔いしれた、「Kiramune Presents Takuya Eguchi Live Tour 2022 朝まで呑みたい〜EGUCHI屋〜」神奈川公演レポート

2011年のTrignal結成以降、アーティストとしてクリエイティブを発揮してきた江口拓也。2021年にミニアルバム「EGUISM」でソロデビューを果たし、満を持して初のソロライブツアー「Kiramune Presents Takuya Eguchi Live Tour 2022 朝まで呑みたい〜EGUCHI屋〜」を開催。常に自分らしくいる江口の生きざまを、音楽とパフォーマンスで表現した。今回は9月11日(日)にパシフィコ横浜 国立大ホールで行なわれたツアー最終日、神奈川公演の様子をレポート!

今夜は全部さらけ出す!
前代未聞の「飲み会スタイル」ライブ



ステージ上には夜の街の風景が映し出され、一杯飲んで帰りたくなるような雰囲気のなか、ライブは始まった。ステージ上段に登場した江口の第一声は、「今日はたくさん飲んで帰ってください!」。そう、これは江口が大好きな〝居酒屋〟をテーマにしたツアーなのだ。デビューアルバムの収録曲「Love & Smile」で会場の温度を高め、間髪入れず江口らしいアゲアゲの楽曲「AGARISM」でメインステージに降り立つ。ダンサーを混じえたパフォーマンスで、会場のボルテージをいっきに頂点まで引き上げた。


「いらっしゃいませ。ようこそEGUCHI屋へ」という江口のゆるい挨拶に心がほぐれる。「初めてのツアーなのでグッズ制作にも気合いを入れた」と語るなか、ファンが手に掲げるペンライトを見つけて満面の笑みを見せた。「ヤバいですよね、ジョッキ型ペンライト!」と、自ら考案したビールジョッキ型のペンライトの出来栄えをファンと喜び合う。「僕はひとりの曲が少ないんですよ。だから全部歌います」と言うと、Trignal活動時のソロ曲「Catch a Break」を披露。江口が独自の感性で作詞をした初恋ソングだが、ラウドロック全開でまさにライブ向きの楽曲だ。激しいギターサウンドと真っ赤な照明の光に包まれた江口は、先ほどまでのゆるさとは真逆の激しい一面を観客に見せつけた。


続いて「Love Loser」をエモーショナルなメロディで歌い上げ、「SŌIUMONDA」ではバンドメンバーと目を合わせながら楽しそうに体を揺らす。1曲ごとに楽しそうな表情が増していく江口のカウントで始まった「ハローグッバイ」は、彼の人生観がよくわかるピースフルな応援歌。頼もしい大きな体とピュアな眼差しで、客席の隅々に視線を投げかけていた。


ステージ上で居酒屋を開店
ツアーメンバーと飲みトーク



「バンドサウンドが難しくて当時は四苦八苦した」という、Kiramune楽曲提供・メンバーが参加したゲーム「ROOT∞REXX」の挿入歌「Heart and soul」を歌うと、曲が終わらないうちにステージを後にした江口。


バックバンドによるアウトロで心地よくなったのも束の間、ステージはスモークと黄色の照明に包まれ不思議な雰囲気に。黄色はTrignal活動時の江口のメンバーカラーだが、きっとファンならもうひとつのキーワードを連想するに違いない。そう、江口が愛してやまない大好物〝カレー〟。「毎日これでもいい」とカレーへの愛を歌う「カレパ!」の時間だ。ダンサーたちもじゃがいもやにんじん、さらにはカレーライスが盛られたお皿やレトルトカレーを両手に掲げ、観客を〝江口拓也ワールド〟へと誘っていく。ついには江口とダンサーの3人が2ndミニアルバム「EGURand」のジャケット写真にも登場した紙袋を頭からかぶり、最もシュールな時間をつくり上げた。


独特な世界観はまだまだ続く。紙袋を脱いでその強い目力をカメラに向けると、最高のパーティソング「Good Unite Infinity」で、「GUI GUI!」と会場を煽る。飲みたい気分が高まったところで、割烹着を着た江口がEGUCHI屋ののれんと提灯を準備し、ステージ上に居酒屋が登場。マイクを忘れて話しだそうとしたり、なんともゆるい店主だ。そこにバンドメンバーが来店し、江口の仕切りでトークコーナーが始まった。メンバーも演奏中とは違うリラックスした表情を見せており、江口はきっと仲間のこんな表情を見る時間が好きなのだろうと感じさせてくれる。その空気を生かしたままアコースティックコーナーが始まり、「Lonely Darling」など3曲を穏やかに歌い上げた。


「まだ飲めるか!?」とスタンドとアリーナに向かって叫ぶ江口。真っすぐに前を見つめて歌を届ける「Break of Day」、江口の持ち味である太く強い〝声〟を前面に押し出したロックチューン「PAPER BOY」と、クライマックスに向けてさらにボルテージを高めていく。本編最後のMCでは、ソロライブを提案された時の思いを素直に語った。「みんなでものをつくるのは好きだけど、ひとりでやるのは苦手。でも、好きにやっていいよと言ってもらえたので」と、本ツアーの開催を決意した理由を告白する。取材の場でも決して嘘をつかない江口だけに、「これからも多分、積極的にひとりではやらないと思う。これが最初で最後かもしれない。それぐらい貴重な場になったから全力で楽しめた」という言葉も正直な思いなのだろう。だからこそ、「またこのメンバーでつくれたら楽しいかも」というつぶやきも嘘ではないとわかる。本編ラストの「Life goes on」が、一杯のお酒のように観客の心に染み込んだ。


しかし、それだけで終わらないのがEGUCHI屋だ。アンコールでは、「みんなそれぞれ楽しく生きていこうぜ、ぐらいしかメッセージがない。同じメッセージを、手をかえ品をかえ曲にしてきた」と、心の内を余すことなく吐露する。そして、発声したくともできないファンを思いやり、「僕は何年先になっても、みんなの声が聞きたい。みんなのGUI GUIコールを聞くまではやめられません!」と宣言。最後の一滴までおいしいEGUCHI屋のライブ、次の開店を心待ちにしたい。


「Kiramune Presents Takuya Eguchi Live Tour 2022 朝まで呑みたい〜EGUCHI屋〜」
2022年9月11日(日)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール

SET LIST
M1.Love & Smile
M2.AGARISM
M3.Catch a Break
M4.Love Loser
M5.SŌIUMONDA
M6.ハローグッバイ
M7.Heart and soul
M8.カレパ!
M9.Good Unite Infinity
M10.ジンセイイチドキリ
M11.Lonely Darling
M12.延長線上のFriends
M13.Break of Day
M14.PAPER BOY
M15.素敵な夜に
M16.Life goes on
EN.HRC

大曲智子