３月に1stアルバム「from here」を発売、６月には初となるワンマン・ライブを大成功させた山下大輝。さらに今年に入って３作目、デジタルシングルとしては通算４作目となる「シークエル」が、９月27日（水）にリリースされるという。「この曲を通じてエールを送りたい」と語る山下に、新譜に込めた思いをはじめ、クリエイターたちとのコラボで大切にしている軸について聞いた。



自分のなかにある「好き」という
気持ちを大切にしてほしい——

——待望の1st LIVEを経て、９月27日（水）にデジタルシングル第４弾「シークエル」を配信されます。今作はどのようなコンセプトで制作に挑まれたのでしょうか？
山下：前作「ヒトコキュウノ」に引き続き、〝物語テイスト〟を追求したい、曲調というものにとらわれず、さまざまなチャレンジがしたいと思っていました。「シークエル」も世界観をファンタジーに寄せつつ、現実との境目、そしてリンクを意識した楽曲になっています。たとえば、物語のなかに自分を登場させながら本を読むことってありますよね？　僕も覚えがあるし、同じ経験をもつ人は少なくないと思うんです。今作ではそういったファンタジーへの純粋なあこがれや、〝自分が成長する栄養素を物語から補給する〟といった過程を描いています。主人公は、引っ込み思案だけれども感受性が豊かで、物語のなかでなら自由に羽ばたくことができる女の子。現実では自分の思いをなかなか表に出すことができずにいたけれど、大好きな本を介しての出会いを通じて、ポジティブな気持ちを得て成長します。そして物語と現実、どちらの世界でも生き生きと輝けるようになる、より魅力的な人になっていく……というストーリーです。

——声優として物語の登場人物を演じられる山下さんだからこそ、よりメッセージ性のある楽曲になっていると感じます。
山下：僕自身も昔からアニメやマンガから力をもらってきたし、声優として言葉の重みを感じてもいます。だからこそ「今、君のなかにある好きって気持ちを大切にしてほしい」ということは、繰り返し伝えていきたいなと思っているんです。たとえ世間では多数派ではなかったとしても隠すことなんかない、悪いことなんかじゃないんだよ。好きなことを好きって言えないのは息苦しいし、実際に僕も経験したことがあるけれど、あのころの宝物は今も輝いているよ。大人になった君の財産になるものだよ、と「シークエル」を通じてエールを送りたいです。

クリエイターとの共同作業は
「ドッキリを仕掛けられているような感覚」

——作詞を常楽寺澪さん、作曲を石黑剛さんと常楽寺さんが手掛けられていますが、楽曲の第一印象はいかがでしたか？
山下：色とりどりなメロディーが印象的で、本当に素敵な曲だなと思いました。歌詞を追っていくと、常楽寺さんはよりリアルな方向性がお好きなのかもしれないなとも感じたんですよね。最初にいただいた歌詞では「本のなかにしか魔法はないから、現実は現実として頑張っていく」というニュアンスだったのですが、「現実のなかにも魔法はあるんだよ」というようなファンタジー要素を足してほしいとお願いしました。現実でもちょっとしたこと、たとえば誰かとの出会いが、誰かにとっての魔法になりえると思うんです。だから僕としては、魔法は本のなかだけじゃなく、現実にもあるんだって伝えたくて。「シークエル」ではリアリストの常楽寺さんが描く現実と、ド・ファンタジー路線の僕の求める魔法が、いい感じにぶつかりあえたのではないかと思います。コラボならではの化学変化を、ぜひ楽しんでいただきたいですね。

——新譜のジャケット・MVイラストは、さわさんが手がけられています。
山下：淡い色使い、そしてちょっとだけ影があるような作風の方を探していたところ、さわさんのイラストに出会ったんです。見ていただいたらわかるのですが、さわさんのイラストはセピアな色の使い方だったり、線の描き方が非常に繊細できれいなんですよね。「『シークエル』の世界観には、絶対にさわさんのイラストが合うぞ！」と思ったので、お引き受けいただけて本当によかったです。ジャケットには学生服を着た男の子と主人公の女の子が描かれています。彼との出会いがきっかけで成長する彼女のあふれ出る気持ちがどう表現されるのか、そしてどんな表情を見せてくれるのか、MVはもう期待しかないですね。

——そして動画編集はこれまで同様、えむめろさんが担当されます。タッグを組まれるのは、すでに３作目となりますね。
山下：えむめろさんは本当にプロフェッショナルだし、いろいろな〝目〟をもっていらっしゃるんだなと感じます。イラストレーターさんのフレーバーを消さずに、編集によってさらなる旨みを引き出すのがとんでもなくうまい方なんだなって。ご一緒するたびに、本当にいい刺激をもらっています。お芝居にしてもそうですが、自分ひとりで考えたところで限界があると思うんです。どうしたってある程度、予想の範囲内に留まってしまうな、と。だからクリエイターさんたちから、本当にその人にしかつくれないものを届けられるたび、毎回ドッキリを仕掛けられているような感覚になるんですよね（笑）。そうして受け取った予想外のアプローチ、これまで知らなかった世界を自分の成長に繋げていきたいし、貪欲に取り入れていく表現者になれたらいいなと思います。

——最後に、「KIKI」読者へメッセージをお願いします。
山下：「ヒトコキュウノ」に続いてファンタジーテイストであり、同時に現実とリンクもしていて、曲中の主人公を自分に置き換えながら共感してもらえるような作品だと思います。まだ心のなかに眠っている自分だけの気持ちを発見したり、「あなたはとっても素敵な存在なんだよ」ということを心に留めて、明日への活力にしていただきたいです。ぜひ「シークエル」をたくさん聴いて、自分自身のことを大好きになってもらえたらうれしいです。

デジタルシングル「シークエル」
作詞：常楽寺澪
作曲：石黑剛、常楽寺澪
編曲：石黑剛
ジャケットイラスト：さわ

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山下大輝 Music Staff Official Twitter　https://twitter.com/DAIKING_staff
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文●藤谷燈子